インスリン抵抗性、原因は内臓脂肪が出す悪玉因子かもしれません
インスリン抵抗性は自覚症状がほとんどなく、健診で偶然みつかることの多い状態です。内臓脂肪が出す悪玉因子、使われない筋肉、6時間未満の睡眠という3つの原因と、腹囲85cm・90cmを目安にした具体的な対策を、厚生労働省と糖尿病情報センターの公的資料をもとに整理しました。

健診で「血糖値が高めですね」と言われても、体はどこも痛くない。国立国際医療研究センターの糖尿病情報センターは、インスリン抵抗性を「インスリン(鍵)があっても、細胞のドアのたてつけが悪いため、開きにくい」状態と説明しています。鍵が足りないのではなく、鍵穴のほうが渋くなっている状態です。すい臓はその分だけインスリンを多く出して帳尻を合わせますが、これがいつまでも続くわけではありません。平成28年の国民健康・栄養調査では、糖尿病が強く疑われる者と糖尿病の可能性を否定できない者がいずれも約1,000万人(合わせて約2,000万人)と推計されており、しかも予備群の段階から自覚症状はほとんど出ません。原因として名前が挙がるのは、特別なものではなく日常の3つです。
内臓脂肪が出す「悪玉因子」がインスリンの効きを鈍らせる
同センターの解説によると、内臓に蓄積した脂肪細胞は、アディポネクチンなどの善玉因子だけでなく、TNF-αやIL-6といった悪玉因子も分泌します。正常体型の内臓脂肪は小さく善玉因子を多く出しますが、内臓肥満体型では脂肪細胞が大きくなって悪玉因子が増え、これがインスリン抵抗性を引き起こして高血糖につながる、という流れです。メタボリックシンドロームに該当する人は、そうでない人と比べて2型糖尿病になるリスクが約3倍とされています。目安になるのが腹囲で、特定保健指導の判定では男性85cm以上・女性90cm以上(それ未満でもBMI25以上)が内臓脂肪蓄積のリスクとして扱われます。体重計の数字より、まず巻き尺です。
動かない筋肉と、下がっていく睡眠休養感
糖尿病情報センターは、インスリンの効果を高めて血糖値を下げる運動として有酸素運動と筋力トレーニングの2つを挙げ、最近の研究では両方を組み合わせるとより良い効果が生まれることが明らかになったとしています。目安は週3日以上、1回20〜60分、1週間に150分以上。歩行なら1回15〜30分を1日2回、日常の歩数と合わせて1日1万歩程度、筋力トレーニングは足・腰・背中の大きな筋肉を中心に週2〜3回、1セット10回程度です。食後に血糖値が上がりやすい人は、食後1〜2時間に体を動かすとよいとされています。ジムに行けない日でも、階段の上り下りのような日常動作(NEAT)を増やすことで肥満が改善するといわれています。
3つ目が睡眠です。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、睡眠不足を含む睡眠の問題が慢性化すると、肥満・高血圧・2型糖尿病・心疾患・脳血管障害の発症リスク上昇に関連することが明らかになっていると記しています。同ガイドが紹介する日本人男性労働者約4万人を7年間追跡した調査では、1日の睡眠時間が5時間未満の人は5時間以上の人と比べ、追跡期間中に肥満になるリスクが1.13倍、メタボリックシンドロームの発症リスクが1.08倍と有意に高くなっていました。令和元年の国民健康・栄養調査では、働く世代である20〜59歳の各世代で睡眠時間6時間未満の人が約35〜50%を占めます。時間だけでなく「睡眠休養感」の低下も、肥満や糖尿病、脂質異常症を含めた代謝機能障害と関連することが国内の追跡調査で示されています。
次の健診を待つ前に — 今日から変えられる3つ
- 体重を5〜10%減らす — 糖尿病情報センターは、5〜10%の体重減少でもメタボリックシンドロームに伴う高血圧・脂質異常・高血糖が改善したり、糖尿病の発症が予防できたりするとしています。フィンランド・アメリカ・中国・インド・日本で行われた予防研究では、食事・運動療法や減量をきちんと行った人は2型糖尿病の発症を29〜67%程度予防できたと報告されています。
- 有酸素運動と筋トレを組み合わせて週150分以上 — どちらか片方ではなく、組み合わせるほうがよいとされています。血糖コントロールが不十分な方や合併症のある方は、始める前に主治医に相談してください。空腹時血糖250mg/dL以上のときなど、運動を控えたほうがよい状況もあります。
- 睡眠は6時間以上を目安に — 睡眠ガイド2023の成人向け推奨事項は「適正な睡眠時間には個人差があるが、6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保する」。あわせて食生活や運動、寝室の環境を見直して睡眠休養感を高めることも同じ推奨に含まれています。
チェックリスト
最後に、ここまでに出てきた項目をもう一度並べておきます。
- 腹囲は男性85cm・女性90cm以上ですか(それ未満でもBMI25以上ではありませんか)
- 1週間の運動は150分に届いていますか。有酸素運動と筋トレの両方が入っていますか
- 睡眠は6時間以上とれていますか。朝起きたときに休めた感じがありますか
- 直近1年で健診を受けましたか。40〜74歳の方は特定健診(メタボ健診)の対象です
当てはまる項目があっても、それだけでインスリン抵抗性があると判断はできません。特定健診では空腹時血糖100mg/dL以上、またはHbA1c(NGSP)5.6%以上が血糖高値として扱われますが、確かめられるのは血液検査だけです。特定健診の実施率は2024年度で61.5%にとどまり、平成28年の調査では糖尿病が強く疑われる人の4人に1人が治療を受けていませんでした。案内が届いたら年に1回は受けておきたいところです。のどの渇き、尿の回数が増える、体重が減る、疲れやすいといった症状があるときは次の健診を待たずに内科・かかりつけ医を受診し、意識がもうろうとするような場合は119番へ。すでに処方されている薬は、自己判断で中止したり量を変えたりしないでください。この記事は一般的な健康情報であり、診断や治療に代わるものではありません。
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