熱中症対策は水の「量」ではなく「中身」 - 汗をかいた日の飲み物選び
暑い日の夕方にだるさや足のつりが出るとき、原因は飲んだ水の量ではなく中身かもしれません。環境省と厚生労働省の資料をもとに、塩分濃度0.1〜0.2%という目安、ビールが水分補給にならない理由、ふだんの日に必要な飲料の量、受診の目安まで整理しました。

こまめに水を飲んでいるつもりなのに、暑い日の夕方になると頭が重い、足がつる、体がだるい ― そんな夏を毎年くり返している方もいるかもしれません。汗を大量にかいた日に問題になりやすいのは、飲んだ水の「量」よりも「中身」のほうです。環境省の「熱中症環境保健マニュアル」と厚生労働省の職場向け指針は、この点についてかなり具体的な数字を示しています。
水だけを飲み続けたとき、体の中で起きていること
環境省の熱中症環境保健マニュアルには、高温環境下での作業や運動などでとくに発汗が多い場合、水分だけを補給すると血液のナトリウムやカリウムが低くなることがあると記載されています。汗にはナトリウムが含まれているため、大量に汗をかいた状態で真水だけを入れると、血液中のナトリウム濃度がさらに薄まります。同マニュアルは、このとき筋肉が収縮しやすくなり、けいれん(熱けいれん)につながることがあると説明しています。
極端な例として挙げられているのが持久系スポーツです。市民マラソンやウルトラマラソン、トライアスロンのように数時間から十数時間に及ぶ運動では、塩分の摂取不足や水の過剰摂取による低ナトリウム血症が少なからず報告されている、とされています。軽症では倦怠感、吐き気、嘔吐、こむら返りなどが、重症では肺水腫や脳浮腫から呼吸困難や意識障害が起きることもある、という書き方です。水をたくさん飲むこと自体がリスクになる場面があるというのは、日常の感覚とは少しずれるかもしれません。

「ビールで水分補給」が成り立たない理由
同じマニュアルは、お酒についてかなりはっきりした書き方をしています。どのような種類の酒であってもアルコールは尿の量を増やして体内の水分を排泄してしまうため、汗で失われた水分をビールなどで補給しようという考え方は誤りである、という趣旨です。しかも、一度吸収された水分も、それ以上の量が後から尿として失われると説明されています。つまり、飲んだ分がそのまま残らないどころか、差し引きでマイナスになりうるということになります。
影響は当日だけにとどまりません。同マニュアルが載せている運動・作業前のチェック項目には、「寝不足、過度のアルコール摂取はないか」「二日酔いはないか」という欄が並んでいます。前日の飲酒も当日のコンディションの一部として見る、という前提で作られたリストです。暑い時期に屋外で長時間動く予定があるなら、その前夜の一杯も含めて考えておくと安心です。

塩分は「飲み物」に混ぜて一緒に入れる
では何を飲めばよいのか。厚生労働省の職場における熱中症予防対策では、作業場所のWBGT値(暑さ指数)が基準値を超える場合、少なくとも0.1〜0.2%の食塩水、またはナトリウム40〜80mg/100mlのスポーツドリンク・経口補水液などを、20〜30分ごとにカップ1〜2杯程度摂取することが望ましいとされています。0.1〜0.2%というのは、水1リットルに食塩1〜2グラム程度の濃さです。環境省のマニュアルも、大量の発汗がある場合は水だけでなくこの濃度帯の水分摂取をすすめています。
一方で、汗をかいていない日まで同じ濃さで飲む必要はありません。同マニュアルによれば、日常生活で飲料として摂取すべき量(食事に含まれる水分を除く)は1日あたり1.2リットルが目安とされています。大量の発汗があった場合の補給量の目安は、体重減少量(発汗量)の7〜8割程度です。
- ふだんは水や麦茶で十分 — 麦茶は茶葉ではなく大麦から作るためカフェインを含まず、家族で同じものを飲めるのが利点です。
- 大量に汗をかいた日は0.1〜0.2%の塩分を含む飲み物に切り替える — スポーツドリンク、経口補水液、または水1リットルに食塩1〜2グラムを溶かしたもの。
- 20〜30分ごとにカップ1〜2杯 — のどが渇いてからではなく、暑い場所に出る前から少しずつ入れておきます。
- 運動や作業の前後で体重を量る — 減った分の7〜8割が補給量の目安になり、自分の汗の量が数字で分かります。
- 高血圧や腎臓の病気などで塩分制限を受けている方は、自己判断で塩分を増やさず、主治医に相談してください。

迷ったら、自己判断で終わらせない
めまい、吐き気、足がつるといったサインが出たら、まず涼しい場所へ移動して体を冷やし、塩分を含む飲み物を少しずつ口に入れます。ただし、自分で水分が摂れない、呼びかけへの反応がおかしいという状態は、その場で様子を見てよい段階ではありません。ためらわず119番に連絡してください。
また、持病がある方、薬を飲んでいる方、塩分制限を受けている方は、水分と塩分の適量が人によって変わります。暑くなる前に一度、かかりつけ医に「自分の場合はどのくらい摂ればよいか」を確認しておくと、夏のあいだ判断に迷わずにすみます。この記事は一般的な健康情報をまとめたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。
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