臭い玉(膿栓)の正体と、口臭を減らす3つの習慣
せきと一緒に出てくる白い小さな粒が、大きさに見合わない強いにおいを放つのはなぜか。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会と厚生労働省の情報をもとに、膿栓ができるしくみと、実際に勧められている舌清掃・うがい・水分のケア、そして絶対にやってはいけないことを整理しました。

せきをした拍子に、米粒ほどの白っぽい粒が口から出てきた。指でつぶすと、大きさに見合わない強いにおいがする——これが膿栓(のうせん)、医学的には扁桃結石と呼ばれるものです。膿栓そのものは病気ではありません。扁桃の表面にもともとある小さなくぼみに、はがれた粘膜の細胞や食べかす、細菌がたまって固まったものです。正体がわかると、においを減らすために本当に必要なことと、ネット上でよく見かける「取り方」のどれを無視してよいかがはっきりします。
膿栓の正体と、どれくらいありふれたものか
扁桃の表面には陰窩(いんか)と呼ばれる深いくぼみが並んでいて、そこに入り込んだ食べかす・細胞・細菌がカルシウムなどと固まったものが膿栓です。徳島大学大学院の高橋章氏らが2014年に The Scientific World Journal に報告した研究では、口腔・顎顔面領域の診断目的で頭頸部CTを受けた連続2,873人分の画像を後ろ向きに調べたところ、39.9%に口蓋扁桃の扁桃結石が写っていました。年齢が上がるほど多く、50代から60代でもっとも多く見られています。ただしこれは「別の目的でCTを撮った人の画像に偶然写っていた割合」であって、症状に困っている人の割合ではありません。大きさも1〜10mmで、その多くは自分では気づかないまま自然に取れていきます。

小さいのに、なぜあれほど強くにおうのか
においの正体は硫黄を含むガスです。厚生労働省の生活習慣病情報(e-ヘルスネット)は、口臭の大部分(80%以上)が口の中で発生する気体に由来し、その主要原因物質は硫化水素やメチルメルカプタンなどの揮発性硫黄化合物(VSC)だと説明しています。口の中の嫌気性菌が、唾液やはがれた上皮細胞、食べかすに含まれる硫黄を含むアミノ酸を分解するときにできるガスです。膿栓は、その嫌気性菌にとって理想的な住みかになります。2009年に Otolaryngology–Head and Neck Surgery に載った研究は、扁桃摘出時に採取した結石を調べ、膿栓は単なる石ではなく歯垢に似た「生きたバイオフィルム」だと結論づけました。結石の中心部では酸素濃度が周囲の液体の約10分の1まで下がっていたと報告されています。ごく少人数を対象にした実験室の研究ですが、粒の小ささとにおいの強さが釣り合わない理由をよく説明します。
口臭との結びつきも測定されています。2008年の British Dental Journal の研究では、口臭を訴えてレーザー治療の紹介を受けた慢性陰窩性扁桃炎の患者49人のうち、VSC測定値が異常だった人の75%で診察時に膿栓が見つかった一方、測定値が正常だった人では6%でした。もともと治療目的で紹介された人たちを対象にした小規模な研究なので一般の人にそのまま当てはめられませんが、膿栓とにおいが無関係ではないことははっきりしています。
今日からできる3つのこと
- 朝起きてすぐの舌清掃——e-ヘルスネットは、VSCが最も多く作られるのは舌の上で、舌苔(ぜったい)の除去が最も有効な予防法だとしています。舌ブラシを鏡で見える一番奥に軽くあて、手前に引く。力を入れすぎないこと、回数は起床時の1回にとどめることまで明記されています——それ以上こすると舌の粘膜を傷つけるおそれがあるためです。
- うがいを習慣にする——日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、扁桃炎の治療として膿を取ることやうがい、抗菌薬の内服を挙げています。またe-ヘルスネットが紹介している1992年の調査(18〜64歳の日本人2,672人にVSCを実測)では、口臭には日内変動があり、食事やうがいなどの口腔活動から時間がたつほどVSC濃度が高くなることが報告されています。歯みがきのあとに続けてのどの奥までうがいをする、という並びにすると習慣として続きます。
- 口の中を乾かさない——唾液はくぼみにたまった汚れを絶えず洗い流しています。e-ヘルスネットは、寝たきりや絶食時、健康な人でも起床時に舌苔が増える傾向があり、これは咀嚼・嚥下や唾液の分泌量と大きく関係していると考えられると説明しています。食事を規則正しくとり、よくかんで食べ、水分をこまめにとることがそのまま対策になります。

やってはいけないこと、受診の目安
動画サイトには、ピンセットや先のとがった道具で膿栓をほじり出す映像があふれています。とがったもので扁桃をつつくのはやめてください。ここで挙げた公的機関の情報のどれにも、そうした方法は載っていません。書かれているのは歯みがき・舌清掃・うがい・水分といった地味なことばかりです。スウェーデンの公的医療情報1177は、扁桃のくぼみに見える白い塊について「これは病気ではなく治療は必要ない、細胞の残りかすは自然になくなる」と説明しています。取れない粒を無理に押し出そうとする必要はありません。
一方で、受診したほうがよい場面ははっきりしています。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、のどの強い痛みや飲み込むときの痛みがあるときは我慢せず耳鼻咽喉科に相談するよう促しています。MSDマニュアル家庭版は、成人については扁桃摘出術の明確な基準はないとしたうえで、扁桃結石によるひどい口臭がある成人に手術が行われることがあると記しています。取り除く処置をするかどうかは、自分で判断することではなく医師と決めることです。
まずは明日の朝の2分から
一つだけ変えるなら、寝る前ではなく明日の朝、起きてすぐの2分にしてください。舌ブラシで舌の奥から手前へ数回、そのあとコップ一杯の水でのどの奥までうがいをする。e-ヘルスネットが最も効果的だとしている舌清掃と、耳鼻咽喉科学会が扁桃のケアとして挙げるうがいが、この2分に両方入ります。すでにできている粒が出てくるまでには時間がかかるので、判断は2〜3週間続けてから。それでもにおいや粒が変わらなければ、道具に手を伸ばすのではなく耳鼻咽喉科を受診してください。この記事は一般的な健康情報であり、個別の診断や治療に代わるものではありません。
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